全内視鏡下脊椎手術

全内視鏡下脊椎手術(FESS)手技

全内視鏡下脊椎手術は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、一部の慢性腰痛症の患者さんに適用される内視鏡下手術であり、8mmの皮膚切開から局所麻酔下に安全に行うことができる、患者さんに優しい手術です。
当院では、2022年4月より新たに治療を開始しました。

これまでの治療方法

従来は全身麻酔、適用困難のケースが存在

腰椎手術の従来法は、例えば腰椎椎間板ヘルニアであれば、全身麻酔をかけて背中の真ん中を縦に5~6cm切開し背筋を骨からはがし、骨を削って神経をよけ、ヘルニアを摘出する方法でした。しかし、1~2週間の入院期間が必要なことから、超早期の社会復帰を希望する方には適用困難であること、筋肉の一部を剥がすことからスポーツ愛好家には不向きであること、全身麻酔が必要なことから内科的な合併症のある方には適用できないことなど、いくつかの制約がありました。

新たな治療方法

局所麻酔で切開も7分の1に

全内視鏡下脊椎手術は2000年頃からヨーロッパや韓国を中心に発展し、本邦には元帝京大学の出沢明教授が導入しました。局所麻酔下に8mmという極めて小さい傷から、専用の内視鏡を使って腰の手術が可能であり、これまでの常識をくつがえす、全く新しい手術です。
経椎間孔的に行う全内視鏡下脊椎手術では、ヘルニアに向けて一直線にアプローチできるため、骨の切除も最少であり、体への負担が格段に小さいです。

全内視鏡下脊椎手術 術後
全内視鏡下脊椎手術 術後拡大

手術の流れ

全内視鏡下脊椎手術は、局所麻酔下に8mmのひとつのポータルを経椎間孔的に作成し、内視鏡を挿入します。他の整形外科分野の内視鏡下手術と同様に、生理食塩水で灌流しながら、必要に応じて3mmのハイスピードドリルで骨を削り、鉗子でヘルニアを切除します。途中、出血があれば、ラジオ波バイポーラで止血を行います。他の脊椎用手術器具と異なり経皮的に行う手術なので、器具がどれも長いのが特徴です。

1 局所麻酔

局所麻酔下で皮膚切開(8mm)

2 内視鏡でのアプローチ

内視鏡を使って低侵襲に病変部へアプローチ

3 切除イメージ

ヘルニアを切除

4 摘出イメージ

ヘルニアを摘出

適応症

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰部脊柱管狭窄症
  • 腰椎椎間板性疼痛症候群
  • 慢性腰痛症

    これまで診断や治療が難しかった慢性腰痛の患者さんに対しても、2つの病態に対して全内視鏡下手術で治すことができるようになりました。1つは High signal intensity zoneで、これは、椎間板にできた裂け目です。この部分に内視鏡を入れて、ラジオ波バイポーラで焼灼することで、痛みをぐっと抑え込むことができます。

    High signal intensity zone(椎間板の裂け目)
    High signal intensity zone(椎間板の裂け目)
    High signal intensity zoneに対する全内視鏡下脊椎手術イメージ

    もう1つは、Modic変性で、椎間板などの慢性的なストレスや疲労が原因と考えられます。これまではボルトを入れて固定するしかありませんでしたが、内視鏡で内部をクリーニングすることで、7-8割の患者さんの痛みがとれることがわかってきました。これらの手術も、ヘルニアと同様すべて局所麻酔で数日の入院期間で行うことができます。

    Modic変性(慢性的なストレスや疲労が原因)
    Modic変性の患部レントゲン
    Modic変性に対する全内視鏡下脊椎手術イメージ

担当医師紹介

井ノ口崇 整形外科 科長

術中の写真

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