理念・運営方針、理事長あいさつ

理念

  1. 近森会グループは、患者さんが尊厳ある人生を送ることができるよう、
    適切な医療サービスを提供する使命があると考えています。
  2. 近森会グループは、患者さん中心の医療を、
    快適に受けられる場所でなければならないと考えています。
  3. 近森会グループは、たえず医療水準の向上に努め、
    スタッフが誇りと責任をもって働ける職場でなければならないと考えています。

運営方針

  1. わたしたちは、24時間365日いつでも、
    よりよい医療の提供を目指します。
  2. わたしたちは、急性期からリハビリテーション、
    在宅まで一貫した医療を提供しています。
  3. わたしたちは、患者さんと接するすべてのスタッフが
    それぞれの専門性を発揮し、チーム医療を行っています。
  4. わたしたちは、他の医療機関や施設との連携により、
    豊かな地域医療の推進を目指しています。
  5. わたしたちは、医療人として豊かな人間性を育てると共に、
    専門知識の修得や技術の向上に努めています。

理事長あいさつ

はじめに

4年前の2016年4月の診療報酬改定で、7:1の看護師の数を揃えれば診療報酬が入るというストラクチャー評価から、アウトカム評価が導入され、更には、急激な少子高齢化による人口の減少により、日本の医療、特に高知の地域医療が大きく変わり、右肩上がりから右肩下がりに大きく変化する、まさに2016年4月は「時の分水嶺」であったと言える。
近森会グループでは7カ年計画の元金返済も重なり、大きな影響が生じ、救急や紹介患者の受入れの促進、人件費削減を含む諸経費の徹底したコストカットや、2017年10月には地域包括ケア病棟34床の開設、2019年4月にはHCU、SCU病棟の再編成などを行わざるを得なくなった。

レミングの死の行進

2018年4月の診療報酬改定では、アウトカム評価が一段と強化され、急性期医療では7:1看護の重症度、医療・看護必要度が30%以上となり、回復期ではFIMによる改善率、在宅復帰率の強化、慢性期では医療区分2、3の重度の患者が80%以上でなければ病院として存続できない状態になっている。
その為、すべてのステージで重症の患者を数多く集め、早く良くして地域へ帰すという競争~レミングの死の行進~が始まっており、急性期基幹病院の稼働率の低下や経営状態の悪化、中小病院においても入院患者数と在院日数の減少から稼働率が低下、一般急性期病床の減少や地域包括ケア病床への転換、慢性期では院長先生の高齢化による廃院や施設である介護医療院への転換が始まっている。

激変する予兆、高知の地域医療

特に高知県では、病床が全国平均の2倍、療養病床は2.5倍と多く、人口が減少し、重症の患者が限られることから、全国に先駆けて大きな変化が起こっている。
この数年、医師の高齢化も重なり、中小の一般病院の医療機能の低下や救急患者のお断りが増えている。それだけでなく、昨年後半になって基幹病院においても、救急対応などの急性期医療機能の低下がみられるようになってきた。これは、基幹病院の経営状態の悪化により医師の労働環境が悪化し、専門医が辞めていくことで生じている。近森のようなチーム医療がなされず、医師がすべての業務を行っている基幹病院では、専門医の数が減ることが、即、急性期医療機能の低下、特に救急対応の悪化に結びついている。そのため、今まで以上に当院への救急車やドクターヘリの搬入件数、緊急入院患者や手術患者が増え、大きな変化が起きている。
高知の地域医療は過去30年間、時代と共に少しずつ変化していたが、こういう変化は、この数年で地域医療が激変する予兆であり、近森会グループも時代の変化に応じ、毎年、柔軟に変化し、対応し続けることが求められている。

地域医療構想の名のもとに医療費削減

つい先日も厚労省から2025年に担う役割や機能別病床数の再検証を要請する公立、公的424病院、高知でも5病院が公表され、大きな問題になっている。この数か月でも高知の各地域で高知県地域医療構想調整会議が開催され、公立、公的病院の具体的対応方針の再検証や、名前の上がった病院の病院機能の転換が話し合われている。それだけでなく、驚くことに開業医の多い地域の診療所の開設や高額医療機器の効率的な活用についても縛りがでてきており、地域医療構想の名のもとに、医療費削減にむけた国の圧力を強く感じるようになった。

時代の変化を予見した「トップダウンの決断」

こういう時代の変化を予見して、近森会グループは地域医療構想が出てくる10年以上前から松田病院や千屋崎病院を譲っていただき、着々と体制を整えてきた。この2病院はともに療養病床であり、地域医療構想が協議されている現在では、病床の多い一般病床への転換は不可能となっている。
7カ年計画で近森病院、近森リハビリテーション病院、近森オルソリハビリテーション病院の全面的な増改築工事を行い、これから20年、30年耐えうるハードを作り上げた。
また、近森病院は急性期338床という中小病院で患者の受入れは医療センター、大学病院、日赤についで地域4番店にすぎなかった。人口減少と少子高齢化で病院を統廃合し、病床を削減するという方向性とはまったく逆に、114床増床し、急性期452床、総合心療センターの精神科病床104床を急性期病床60床に絞り込み、これを統合し512床の大病院になっている。
まさに全国で2~3病院しかなしえなかった逆張りの発想による増床であり、右肩上がりの時代だからこそ出来た「トップダウンの決断」でした。これにより救急車の搬入件数は1.5倍、今まで満床でお断りせざるを得なかった紹介や救急による入院患者数は1.4倍と1.6倍になった。中四国の救急搬送件数は2017年度は倉敷中央病院、広島市民病院についで3番目となり、生命にかかわるメジャーな傷病の入院患者数や手術件数は2016年度から高知県トップ、地域一番店になることができた。(図1)

図1

限りない機能の絞り込みと連携

ソフト面でも20年前から地域医療連携をすすめ、2003年には高知で初めて地域医療支援病院に承認され、現在もフェイス ツー フェイスの連携を深めるべく先生方に病院を回って頂いている。
さらには2000年から心臓血管外科の開設と共にICUなどの重症病棟を整備し、重症病棟と一般病棟のスムーズな病棟連携もベットコントロールナースにより行なわれている。
2003年には栄養サポートチームにより管理栄養士が病棟に出るようになり、薬剤師、臨床工学技士、リハスタッフ、MSWなどの多職種による本格的な病棟常駐型チーム医療がスタートし、医師、看護師の業務のタスクシェアリングに大きく貢献している。このように病院や病棟、スタッフの機能を絞り込むことで医療の質を上げ、労働生産性を高め、病院機能を整備してきたし、先生方はじめスタッフみんなの労働環境や、やりがいが飛躍的によくなってきた。
さらには今までも行ってきたが、救急や紹介、一般外来からの入院を増やし、診療単価を上げ、医療の質を確保しつつ、人的、物的コストの徹底した削減など、今までの発想、例えば「祝日は休むもんだ」といった今までの発想にとらわれず、祝日を通常業務に変更し、月20日の営業日を確保する試みや、土日祝日の入退院の促進やCTやMRIなどのルーチン検査もすすめている。

ボトムアップで組織の活性化

2019年4月には麻酔科の森田顧問ご指導のもと、小坂部長が着任され、杉本部長代行とともに万全の体制のもと緊急手術の麻酔を積極的に対応していただくことで、手術件数の増加に大きく貢献している。
組織の活性化のために、看護部でも師長、主任に代行、心得制度を導入し若いスタッフを積極的に登用するなど、病棟や外来、各部署ばかりでなく委員会でも若返りを図っている。
2019年2月からは部科長会を廃止し、診療責任者会議に組織替えを行った。その会では先生方にも病院の運営や経営に参画していただき、その決定事項を合同運営会議で報告、検討し、先生方はじめ全職員に病院の方向性を周知徹底することで、みんなで決めたことは確実に実行する体制を作っている。右肩下がりの時代には、このように「ボトムアップの意思決定」を行い、細かいマネジメントを積み重ね、アウトカムを出していく方がいいように思う。

医療の質を保ちつつ医師の働き方改革

医師の働き方改革では、特に地方の救命救急医療が大きな影響を受けるといわれている。週40時間勤務。週に1回又は月4回は完全に休む。時間外は月80時間以内という原則を守りながら、通常業務と同じERの時間外、休日勤務は原則交代制とし、病棟の当直業務は宿日直体制になるよう対応する予定です。
時間外は入院患者の急変やER呼出し、緊急手術や処置といった業務に限定し、病棟業務は可能な限り時間内に行う方向で対応したいと思っている。休日の病棟業務は担当を決め、グループ診療で行う体制をとり、先生方の労働環境の改善に繋げていきたいと考えている。
ただ、今まで身を犠牲にして高知の救命救急医療を支えてきて下さった先生方の「患者さんのために」という熱い思いが、今回の医師の働き方改革でビジネスライクに変わってしまうことを私は最も恐れている。
交代制勤務やグループ診療が導入されたことで、先行病院では「朝までなんとかもたして、後は知らない」といった医療の質の低下が危惧されているが、患者の診療に全責任を持つ主治医制は最後まで続けていきたいと考えている。

おわりに

時代が大きく変わり、「今までの発想にとらわれない自己変革」が求められる時代になった。医療の質を上げ、それを経営改善で支え、高知の救命救急医療の基幹病院として、県民・市民のために最後まで生き残り責任を果たしていきたいと決意している。
生き残る病院は規模の大きい病院でも、繰り入れがいっぱい入る公立病院でもなく、自己変革を限りなく続けることができる病院こそが生き残れるといえる。
理事会、診療責任者会議、合同運営会議はじめ各種委員会において、検討事項を真っ先に時間をかけて協議し、決定し、報告事項は特記事項のみとする、病院が常に変革できる体制に変わりつつある。
近森会グループは「小さなマネジメントを積み重ね、アウトカムを出す」ことで、常に変化し、今まで以上によりよい病院に変わり続けている。先生方はじめ、多くのスタッフの皆さん、地域のかかりつけの先生方、救急隊の皆さん、そしてなによりも、近森会グループがお世話になっている多くの企業の皆さんとともに、これからも元気に歩んでいきますので、どうかよろしくお願いいたします。

近森 正幸(ちかもり まさゆき)
生年月日
1947(昭和22)年7月31日  高知県生まれ
現職
社会医療法人 近森会 理事長
社会福祉法人ファミーユ高知 理事長
医療法人松田会 理事長
学歴
1966(昭41)年3月 土佐高等学校 卒業
1972(昭47)年3月 大阪医科大学 卒業
職歴
1972(昭47)年6月  大阪医科大学 第二外科入局
1976(昭51)年4月  癌研究会付属病院
1977(昭52)年4月  大阪医科大学 一般消化器外科
1978(昭53)年4月  近森病院 外科科長
1984(昭59)年11月 院長・理事長就任
2006(平18)年4月  社会福祉法人ファミーユ高知 理事長就任
2007(平19)年6月  医療法人松田会 理事長就任