病院らしい病院としてあり続けるために

 

 病院らしい病院としてあり続けるために

-病院機能の絞り込みとスタッフ機能の絞り込み、コストの削減-
 
 
 
2008年4月執筆
 
社会医療法人近森会 近森病院
 
院長  近森正幸
 
 
はじめに
 急性期医療においては、高齢社会の到来、診断群分類(Diagnosis Procedure Combination:以下DPC)による一日包括払いの導入など、これまで以上に良質で効率的な医療を行なわなければ、病院らしい病院として存続できない時代になったといえる。そのためには、障害や臓器不全を持たないヘルシーペイシェント相手で出来高払いの時代の医療の固定概念から脱し、病院のあり方を変え、スタッフの構成を変えて、提供する医療の仕組みまでも変える必要がある。
  1. 高知県の現状
    高知県は、ベッド数、在院日数ともに全国でもっとも多く、病院数、ベッド数においては全国平均の倍で、満床にするためには、倍、患者を長期に入院させる必要があり、結果として在院日数も倍になっている。しかも全国有数の高齢県、貧乏県であり、日本の医療の矛盾が集まった県が高知県だといえる。
    こうした高知県の状況下で医療構造改革が起こると、日本で最も早く医療の変化が現れることになる。いわば日本の医療に起こるであろう10年先の変化が、高知県で起こっているといえる。現在、低医療費政策や研修医制度の改革による勤務医の減少により、郡部はもとより高知市内における地域医療も厳しい状況となり、医療崩壊前夜の様相を呈している。
    このような地域で医療を行なっていくためには、本来あるべき医療の方向へ常に自己変革し続けなければならない。さらに、高知県は人口自然減の県であり、あと二十年先には高齢患者の減少とともに入院患者さえも急速に減少すると考えられ、高知県の病院は真の構造不況業種に転落することが予想される。
     
  2. 自己変革で目指すべき本来あるべき医療とは
    本来あるべき医療に立ち戻るためには、「病院は誰のためにあるのか」を突き詰めて考えなければならない。病院や院長の利益のためなのか、あるいは患者・国民の利益のためなのか。病院の利益を院長の資産として残していくのか、それとも病院の資金として残すのか、病院の建物、設備として残すのか、あるいは病院スタッフの蓄積として残すのか、病院の利益をどのような形で利用し残していくのか、このことが、これからの病院の存続に大きくかかわってくることになる。
    病院は医療を提供しているサービス業であり、良質な人的資源の投入量が多いほど質のいいサービスが提供できる。私は、病院の利益をいかに人的な蓄積へ投資するのか、それが、もっとも病院らしい病院として生き残るための大きな力になるのではないかと考えている。そのような良質なスタッフを数多く擁するためには、売上を伸ばし、コストを削減し、絶えず利益を出していかなければならない。売上は「患者数×単価」であり、患者数を増やすか、あるいは単価をあげることが売上増につながり、人件費比率を下げ、物のコストを削減することで利益をあげ、スタッフを永続的に増やし、病院の医療の質を高めていくという努力が必要となってくる。
     
  3. 単価アップは病院機能の絞り込み
    単価を上げるためには、「病院の医療機能の絞り込み」が欠かせない。外来医療から単価の高い入院医療に医療機能を絞り込み、外来医療でも一般のかかりつけの患者の外来は、月に1回来て診察し薬を出すだけで単価は非常に安い。むしろ救急や紹介、専門外来の方がはるかに単価は高く、そうした方向に病院の医療機能を絞り込むことが重要となってくる。ただ、そうすることでどうしても足りない医療機能は、地域のかかりつけ医との地域医療連携で補う必要がでてくる。
     
  4. 患者数の増加やコストの削減は、スタッフの機能の絞り込み
    病院の医療の質を上げて評判をよくし、患者数の増加を図る一方で、労働生産性を上げ、人件費比率や物のコストを下げていくためには、「医療スタッフの機能の絞り込み」が欠かせない。医師、看護師中心に医療の質を高めようとすると、人件費が高いのでコストがかかりすぎる。医師は医師しかできないこと、たとえば整形外科の先生であれば、手術に専念してもらった方がいいし、そうすることで次第に手術の腕も上がってきて、評判もよくなり、患者数も増えるようになる。売上も上がってくるし、それに伴い、労働生産性も高まり、多職種のスタッフを数多く雇っても相対的に人件費比率は下がってくる。同時に、人手をかけ、いい医療を提供することで物のコストも下がってくる。
    医師には、医師しかできないことをしてもらえれば、専門性をより高めることができ、医療の質も向上してくることになる。
    医師の専門性を高める一方で、看護師、コメディカル、事務職など、さまざまな職種のスタッフも高い専門性を持って、チームアプローチをすることによって、非常に質の高い安定した医療が提供できることから、多職種のチーム医療が非常に重要となる。
    最近、地域医療連携とチーム医療という言葉をよく耳にするが、重要なことは、「病院の医療機能の絞り込み」であり、「医療スタッフの機能の絞り込み」であって、その結果、増収増益となり、多職種の質の高いスタッフを雇い入れる原資となる。
 

医療機能の絞り込みと地域医療連携
 病院の医療機能のどの部分を選んで、医療資源を集中していくのか、医療機能の絞り込み、「選択と集中」が非常に重要であり、これを病院の理念に基づいて行なう必要がある。
  1. 近森会グループの機能分化の推移
    昭和59年、父の死によって私は37歳で近森会の理事長と近森病院の院長になった。その当時は寝たきり患者の病床が3分の2を占めており、大勢いた付き添いの焼くサンマの煙で火災報知機が鳴ったり、たばこの煙で全館まっ茶色というような、そんな病院であった。救急病院は、障害を残しやすい患者が救急車で寝て入院するため、リハビリ機能がなければ「寝たきり製造病院」になってしまう。当時の近森会は、寝たきりの入院患者の増加とともに、寝たきり病床が増え、それに伴って病院が大きくなってきた。
    平成元年、近森リハビリテーション病院を開設、これによって急性期とリハビリ、そして身体障害者の在宅サポート、精神科でも同様の発想で、第二分院も精神科の急性期と精神障害者の在宅サポートという機能分化が可能となった。リハビリは病院を機能分化する上でたいへん大きなキーワードとなっている。
    近森病院の急性期病床は昭和59年頃は120床で、その後、平成4年には最大で387床となった。しかし、これからは在院日数も減少し、急性期のベッドはこれほど必要ないと判断して、平成14年には301床に減床。その後、地域医療支援病院となり、患者も増え、現在は338床になっている。
    近森リハビリテーション病院は、現在180床で、全館回復期リハビリテーション病棟となっている。在宅総合ケアセンターは、身体障害者の在宅サポートセンターとなっていたが、地域に介護保険施設が充実してきたこともあり、平成19年の7月に閉鎖した。地域の病院から委譲の話があり、改装して10月15日に整形外科専門の回復期リハビリテーションを行なう近森オルソリハビリテーション病院を開設した。
    繰り返しになるが、リハビリテーションは病院の機能分化のキーになることと、社会が求めている医療ニーズに合わせて絶えず病院を変えなければ、医療機能も高まらないし、生き残ってはいけないといえる。(資料1)
    私が理事長になってからの23年間で、医師、看護師、リハビリテーションスタッフ、ソーシャルワーカーといった、患者を早く治して家に帰す、そういう機能のスタッフが非常に増えている。看護助手などの助手的な部分は外部委託としているが、これも人件費のコストをできるだけ削減する努力の現れである。(資料2)
    また、老人保健施設も入れて、ベッド数は16%の増加であるが、入・退院患者数は3倍になっており、同時に収入も3倍になっている。寝たきり患者を全部出して、近森会全体を回転する病床に変えたことと、在院日数が短くなり、処理患者数の増加に伴って収入も増加した。病院は生活する場ではないということで、いかに治療をする病棟にしていくか、病院本来の機能に戻ることがいかに大切かを示している。(資料3)
     
  2. 一般外来の縮小と逆紹介の推進
    平成11年10月、一般外来を縮小して逆紹介を推進した。単価の安いかかりつけの患者の外来を捨て、外来は救急・紹介・専門外来に特化し、病院全体を入院医療に特化していった。現在でこそ、地域医療連携や病院の医療機能の絞り込みは普通のことになってきているが、当時は、実際にやっているところは少なく、実績もなかったことから、この決断はものすごく怖く、足が震えたことを覚えている。外来に患者さんが溢れているからうれしいではなく、外来がガラガラでうれしい院長へ、180度の自己変革が求められた。
    平成11年10月に逆紹介を始めて、毎月400人程度、最近は500人以上、落ち着いた外来患者を地域に紹介している。それに伴い月に15,000人あった外来患者数は、現在は10,000人に減少、外来患者数が3分の2になった。おもしろいことに、外来患者数は1年、2年、3年と減り続けたものの、4年目あたりから減少がストップした。高知の中央医療圏の医療需要と近森病院の実力のバランスは、およそ外来10,000人くらいというところだろうか。初診患者も、「当院は紹介外来制」ということで、減少したが、これも4年目くらいで初診患者も底をついた感じである。(資料4) (資料5) (資料6)
    逆紹介をする前は地域医療連携室を開設して連携を行なっていたが、紹介患者はなかなか増えなかった。このときの私は、「一度近森に来たら絶対に逃がさない、ずっと近森に通い続けてほしい」という思いを持っていた。ところがその後、積極的に患者を外に出したので、「近森は変わった」、「紹介したら必ず返してくれる」、しかも紹介患者でなくても逆紹介してくれるということで、開業医の先生方はたいへんに喜んでくれた。そんなことから、最初は月に200~250人の紹介だったが間もなく350人に増え、最近は400人を超えるようになった。(資料7)
    地域医療連携室を経ての月別紹介患者数も、年々増加している。ことに平成18年、19年が増えているが、これは患者の送迎を始めたからで、たいへん評判がよく、紹介患者の増加につながっている。最近は、ドクターカー、ドクターヘリの運用も開始しており、地域医療連携に大きく貢献してくれるものと期待している。(資料8)
    最近、救急で入院する患者さんの比率が増えてきている。これは、救急で重症患者が来てくれるようになったためで、これは紹介でも同じ傾向になっており、単価の高い重症患者が数多く近森病院に来てくれるようになったということである。(資料9)
    一般外来が減り、紹介と救急が増えたことで、地域医療支援病院の紹介率も80%をコンスタントに超えるようになり、平成15年2月に地域医療支援病院に高知県で初めて認められた。(資料10)
     
  3. 右肩上がりの時代から右肩下がりの時代へ
    これまで私どもがやってきた入院や外来の変遷を、時代の移り変わりとともに見てみると、バブルの時代、右肩上がりのときは診療報酬も上がり、単価も上がっていた。このような時代は、設備投資をして立派な病院をつくり、ブランド力を高めて、入院・外来患者を集めれば集めるほど単価が上がっていくので、収入が増えることになる。こういう右肩上がりのバブルの時代はシェア拡大が大事で、施設完結型医療、総合病院の時代だといえる。一般企業でも全く同じで、総合家電だとか総合商社だとか、如何にシェアを獲得していくかが大事な時代であった。
    一方、右肩下がりのデフレの時代は、トップ企業であっても世界で1番目、2番目の業績を持つ部門しか残さず、他の不採算部門はどんどん削っていく時代といえる。これは病院も同じで、診療報酬も下がり、単価も下がってくるので、病院機能の絞り込み、スタッフの機能の絞り込みで単価をあげ、医療の質を高めコストを下げることが重要となる。もはやシェアが大事な時代ではなく、利益が大事で、そのためにはチーム医療と地域医療連携、地域完結型医療の時代だといえる。診療報酬が下がり、単価が下がる時代になり、病院のあり方、そして医療のやり方も大きく変わってきて当然といえる。
    バブル期の近森会の入院及び外来別収入推移は、平成8年くらいまではリハビリテーション病院や本院の新館、老人保健施設を開設して、入院患者数をどんどん増やし、収入は、平成元年の2億5,000万円から5億5,000万円、7~8年の間に倍になった。また、新館を開設して、外来患者が増加し、1億円から2億8,000万円と、外来も2.8倍になっている。こうした右肩上がりの時代は、入院や外来の患者をいかに増やしていくか、シェアをいかに拡大するかが重要となる。
    しかし、右肩下がりの時代は診療報酬はマイナス改定となり、患者数が増えても単価が下がることで、平成9年あたりから収入は増えなくなった。このあたりがたいへん苦しかった時代である。なぜこんなに収益が上がらないんだと。今から考えたら、単に診療報酬の単価が下がってきただけだが、後から振り返ったらよくわかるのに、その渦中にいるときはなかなかわからないものである。(資料11)
    デフレ時代の近森病院の入院、外来別平均単価は平成11年までは単価はまったく変わらない。変化が現れ始めたのは、一般外来はできるだけ縮小する10月から始めた逆紹介からで、平成12~15年の4年間、患者数が減った期間だけ単価が上がっている。外来患者数が変わらなくなってくると、単価はほとんど変わっていない。平成17年に専門外来とER、ウォークイン外来を分けたが、単価の増加はなかった。外来単価を上げるためには、外来の化学療法だとか、在宅酸素、CAPD、透析などの単価の高い外来に全面的に転換する必要があると思われる。
    入院では、心臓血管外科の開設、ICU、CCUやHCUの開設、急性期病院加算、地域医療支援病院認定、急性期特定病院加算などの重症患者を受けられるような体制づくりをして、機能を絞り込んだ結果、重症の紹介や救急患者も増え、単価はどんどん上がっていった。デフレの時代は、やはり病院の医療機能を絞り込まないと単価が上がらないということを示している。(資料12)
    単価の上昇に伴い入院収入は順調に増えている。DPCが始まってからは単価に変化はないが、病院の評判が良くなって稼働率が上がり、売上が上がっていった。反面、外来の単価は1.5倍になったが、外来患者数が3分の2になり、外来収入はほとんど変化はなかった。むしろ最近は単価が下がり気味で、外来の売り上げが減少してきている。(資料13)
    以上、入院機能の絞り込みでは単価と入院患者数がともに増加し、売り上げが飛躍的に増加した。外来機能の絞り込みでは単価は増加したが外来患者数は減少し、売り上げはほぼ横ばいであった。ただ、外来患者数が3分の2になって、病院の外来が本来診ないといけない紹介、救急、専門外来の患者を時間をかけてしっかり診れるようになったといえる。
    病院は地域医療、特に競合病院によって大きく影響を受けるので、どういう機能に絞り込んで、どこに「選択と集中」をしていくかは、各々の病院が考えて決定し、実践することだと思う。高知市の駅前にある近森病院が、平成11年にたまたまやったことが、こんな結果になったということであり、他の病院で同じことをやっても同じようにいくとは限らない。やはり競合病院の存在は大きな影響を与えるので、その辺の事情も考慮したうえで、病院の医療機能の絞り込みを行なっていかなければならない。
 

スタッフの機能の絞り込みとチーム医療
 ―リハビリテーションと栄養の重要性―
 医師は医師にしかできないことをする、看護師は看護師にしかできないことをして専門性をいかに高くするか、そして高度な専門性をもった多職種が、いかにチームワークで質の高い医療を行なっていくかが重要である。医療の質がよくなり、それによって患者の評判がよくなれば、患者数も増えることになる。当然、収入も増え、患者一人当たりの人件費比率も相対的に下がってくる。いい医療をすれば薬や診療材料といった物のコストも下がってくる。
 高齢社会を迎え、在院日数短縮とともに、高齢の患者が増え、重症かつ臓器不全で、障害を持った患者が多くなる。こうした患者に対応せずに、時間がきたからといって転院させるのではなく、チームで目一杯対応しなければならない。
これから先の入院医療は、リスクのない患者、すなわち若くて自分で動いてご飯も食べてくれる、そういう患者はクリニカルパスでベルトコンベアに乗ったようにスタッフが個々に対応して早く退院できる。しかし、リスクのある患者、お年寄りで臓器不全があったり障害があって、すぐ寝たきりになって廃用が進み、自分でご飯を食べないために低栄養になるなど、そういった患者はチームで対応して何とか退院まで持っていかなくてはならない。(資料14)
 特にこれからは、リハビリテーションと栄養が重要となってくる。リハビリテーションは、廃用を予防し、家に帰るための障害を軽減し、できるだけ早く自宅に帰ってもらうためにはなくてはならないものである。低栄養に対する栄養サポートは免疫能を維持し、感染の繰り返しを防止し、合併症を防ぎ、長期入院が減り在院日数が短縮する。
リハビリテーションは病院の機能分化と地域医療の機能分化に大きな影響を与えるが、栄養は「すべての病気に効く薬はないが、栄養はすべての病気に効果がある」ことからも、医療の根幹といえる。栄養は病院の労働生産性を上げ、医療の質を上げ、物のコストを下げる上で大きな影響を与える。だから、点数だけとっておこうという気持ちで栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:以下NST)をやっているところもみうけられるが、徹底的にやることではじめて病院の医療が変わってくるし、それだけ大きな効果を上げるのが栄養サポートだといえる。
  1. チーム医療による病棟の変化
    いま入院医療は医師、看護師中心から多職種によるチーム医療に変わっている。診療材料、医薬品、減菌、清掃、ハウスキーピングなどは外部委託となり、モノは直接現場に持ってきて、できるだけ看護師は動かなくても済むようになっている。
    システム化により、発生源入力のオーダリングで転記がなくなっているし、看護の支援システムも稼動しており効率化に貢献している。2006年10月には電子カルテも始まり、チーム医療が行なわれている現場に電子カルテが入ることで、情報の共有化が可能になり、チーム医療のレベルが上がり、医療の質の向上に極めて大きな働きとなっている。
    NSTで病棟ラウンドをやっているが、出張で参加できなかった時、医師の私が書くところに管理栄養士が代行で適切に所見を書いている。ということは主治医の作成した文章をコピーアンドペーストすれば、管理栄養士でも医師の所見が書けるし、正確に理解できる。これはすごい時代になったと実感したことである。
    病棟には薬剤師や管理栄養士、PT、OT、ST、CE、そしてソーシャルワーカーが配属されている。また、ICU、CCUといった重症病棟にも配属されており、リハビリチーム、栄養サポートチーム、急性期チーム(人工呼吸、循環・透析サポートチーム)が休日も対応している。これらのチーム医療が横糸となり、医療の質を上げ労働生産性も高まっている。
     
  2. コメディカル部門の変化
    薬剤部も医薬分業やSPDで病院薬剤師本来の仕事についており、臨床栄養部も調理の全面外部委託により、NSTに全員参加するようになった。
    臨床検査部にしても検体検査をブランチラボで外部委託し、臨床検査技師は生理検査や細菌、病理だけでなく超音波や内視鏡、心カテ検査にも参画し、おおいに変わってきた感がある。
    多職種によるリハビリやNSTのカンファレンスも各病棟で行なわれている。
    リハビリテーションの開始は、骨折では0.48日、脳卒中は0.92日、心疾患は1.56日で、ほぼ入院当日か翌日からリハビリが開始されており、いかに早期の介入が臨床現場で行なわれているかを示している。
     
  3. 心臓血管外科手術症例におけるチーム医療の効果
    心臓血管外科の手術では、バイパス待機手術の抜管率は、手術室抜管が81%、これは術者と麻酔医の連携がうまくいっていることを示している。食事摂取は9割の方が手術翌日から食事をしているし、手術の翌日ベッドから離れて立つ人が85%、まだ点滴とか注射がクリスマスツリーのようにあるが立っている。術後の歩行は、手術日翌日と2日目で9割以上になっている。点滴などを引っ張りながら、馬蹄形の歩行器で廊下を歩いており、早期離床、早期歩行が迅速に行なわれている。
    そうした結果として、平成12~18年の手術死亡率、術後1カ月以内の死亡が、待機手術で0.7%、緊急手術で12.7%と非常に良好な成績を残している。
    なお、平成18年の心、大血管の手術死亡率は待機手術、緊急手術ともに0%であった。待機手術で手術死亡がなかったことは、早期離床と早期歩行によりできる限り合併症を起こさないように努力した結果と考えられる。緊急手術の患者は重症例が多く、適切な手術手技はもちろん、術後の完璧な循環と呼吸のサポートとともに、尿の出ない場合は透析で除水し、充分な栄養サポートを行ない、低栄養からくる免疫能の低下を防ぎ、感染を防止したことが効果を上げている。
    リハビリテーションと栄養が、如何に医療の質を向上させることができるかが理解してもらえるのではないかと思う。
     
  4. NSTは医療を大きく変えるツール
    NSTの点数をとるために、格好だけでもやろうでは駄目で、大きな効果は期待できない。入院患者全員を週1回スクリーニングして、すべての栄養の悪い患者にNSTの介入をすることが大切である。そのため近森病院では338床で月に200~300人、年間2,000人以上の患者にNSTの介入を行なっている。これは日本静脈経腸栄養学会に届けているNSTの介入件数では全国1位となっている。(資料15)
    一般病棟はもちろん、ICUやCCUの重症病棟にも管理栄養士が配属されており、しかも在室日数3日と非常に患者の回転が早いため、NSTラウンドは週2回行なっており、管理栄養士は休日も出てきて担当医、担当看護師と相談しながら栄養サポートを行なっている。
    ショックなどの循環動態不安定な重症患者もGFO(グルタミン・ファイバー・オリゴ糖)を投与して、できるだけ腸管の萎縮を防ぐようにしている。3日間食事をしないと、腸管の重量は30%ダウンし、腸管粘膜の萎縮が起こってくる。そうするとバクテリア・トランスロケーションが起こって、敗血症を併発し、臓器不全を起こして死んでしまうことになる。できるだけ腸を使い、重症の患者であっても腸管の萎縮を防ぐことが大切である。
    NSTの介入により経腸栄養も増えてきた。以前はほんとうに少なかったが、最近は人工呼吸をしているとか、意識のない患者でも、腸を使える患者は全例経腸栄養を行なっている。重症患者でも経腸栄養で十分なカロリーとたんぱく質、水分が入るので、輸液の使用量は少なくなる。経腸栄養は、口から食べられない患者でも腸から栄養が吸収され、肝臓で代謝され、身につく栄養になるので、特に高齢者にとっては生理的といえる。(資料16)
     
  5. NSTの効果
    病院全体でも、食事の提供は増え続けているが、一般食は減って、特別食が増えている。NSTが稼動し始めた平成15年から比べると3万食以上増加しているし、食費も年間3,200万円増加している。NSTの点数はそれほどではないが、DPCでも食事は出来高であり、食数に応じて出来高部分は増えることになる。(資料17)
    また、輸液の使用状況は、NSTを始めると栄養への関心の高まりとともに、最初の1年は中栄養から高カロリーの輸液が増えてくる。それ以降は、経口や経腸栄養が増えてくるので、輸液の使用量は減っており、特に高単価の中カロリーや高カロリー輸液が減ってくることで、輸液の使用金額も減ってきている。(資料18)
    よりはっきりしているのは抗生剤で、NSTなどのチーム医療によって使用量や使用金額が減少している。ペニシリンやセフェム系第1世代が使用され、第2世代、第3世代、第4世代のセフェム系は使われなくなってきている。カルバペネム系や複合抗生剤はよく効くため増えているが、他の抗生剤は著明に減少してきている。
    これは何を示しているかというと、ピンポイントでその病原菌だけに効く抗生剤を使っているということである。広域に効果のある絨毯爆撃のような抗生剤はやめて、ピンポイントの、病原菌だけに効く抗生剤を使って、さらには充分量の抗生剤を、充分な回数投与し、必要がなくなればすぐ中止することで使用量が減っている。(資料19)
    しかも、DPCでジェネリックを入れることによって単価が下がって使用量が減るので、これまで1億4,600万円の使用金額が、5,000万円と3分の1になってしまった。これはものすごい変化で、NSTを中心としてクリニカルパスや感染対策などのチーム医療が抗生剤の使用量を減らし、ジェネリックを導入して単価を下げ、その結果が出たということであろう。(資料20)
    注射剤全体の使用金額は、NSTの導入で一時上がったものの、それ以降は下がっており、年間2億円下がっている。調べてみると、使用量が下がって毎月1,000万円、ジェネリックを入れて単価を下げて1,000万円のコストダウンとなっている。ちなみに、診療材料も効率的な使い方と単価のダウンで1,000万円ダウンしている。DPCは1日いくらと決まっているので、コストが3,000万円下がるということは、毎月3,000万円の利益が出るということであり、NSTを中心にしたチーム医療が、物のコストの削減に大きく貢献していると考えている。(資料21)
    NSTの最大の効果は、単に点数がとれるとか、出来高の食費が増えるとか、物のコストが下がるというだけではなく、医療の仕方そのものが変わることにある。
    これまでの20世紀の医療は、医師、看護師中心の医療で、手が足りないから絶食し、末梢輸液で、抗生剤の絨毯爆撃をする。しかし、絶食にすると急速に腸管が萎縮するし、末梢輸液では低栄養になる。低栄養で免疫能の低下した所へ、抗生剤の絨毯爆撃で菌交代現象が起こり、善玉の腸内細菌が死に絶えた後にMRSA腸炎になって、それが絶食による粘膜の萎縮からバクテリア・トランスロケーションを生じ、MRSA敗血症を併発、そして臓器不全を起こして死んでいくことになる。昔は若い患者が多く、若い人には筋肉があり、2週間くらいの絶食では栄養状態が悪くならないので、こういう非生理的な医療にも耐えられたといえる。現在は高齢の患者が多く、高齢者は筋肉がなくて栄養の蓄積がないために、1日、2日の絶食で栄養状態が急激に悪くなってしまう。
    21世紀の医療は、高齢社会を迎えて、チーム医療で栄養サポートを行ない、できるだけ腸を使って、輸液を減らし、ピンポイントの抗生剤で菌交代現象をなくす。そうして低栄養から生ずる免疫機能の低下を防ぎ、感染症の繰り返しを防止し、長期入院が減り、在院日数も減り、処理患者が増える。それに伴い労働生産性が高まり、相対的に人件費比率も下がるし物のコストも削減される。このようにNSTは、高齢社会を迎えて今まで常識と思っていた医療を大きく変えるツールになると考えている。
     
  6. チーム医療と地域医療連携
    チーム医療は、多職種の高い専門性でチームでアプローチ、地域医療連携は、各医療機関の機能特化と地域医療連携、病院ではチーム医療で、地域では地域医療連携、これなしではもう病院としてやっていけない時代を迎えたといえる。
 

近森会グループの現状と地域医療
 近森病院は、田舎にある病院としては急性期のいろいろな指定をとっており、ICU・CCU24床、HCU20床で、地域医療支援病院、管理型臨床研修病院、7:1看護、DPC対象病院となっている。近森リハビリテーション病院は全館180床の回復期リハビリテーション病棟で脳卒中、脊損のリハビリを行なっている。近森オルソリハビリテーション病院は100床で、整形外科専門のリハビリを提供し、回復期リハビリテーション病棟56床、亜急性期病棟30床を有している。近森病院第二分院は精神科の専門病院として、急性期治療病棟、回復期病棟、個室の多いストレスケア病棟があり、在院日数は70日と非常に短い。
 急性期の近森病院で、できるだけ早く患者を治し、障害が残ってもリハビリテーション病院でリハビリを行なって家に帰す。精神科でもできるだけ早く治して、駅前のメンタルリハビリテーションセンターで精神障害者の在宅のサポートを行なう。(資料22)
 急性期からリハビリテーション、在宅へ、つまり、ゴールは在宅ということで、各医療施設の機能分化と有機的な連携、地域完結型医療、地域のみんなで支える医療を目指している。
 急性期病院は臨床研修病院、7:1看護、救急か高度医療か専門医療に機能を絞り込み、そしてDPC算定。これらにより医師が来てくれ、看護師が来てくれ、患者が来てくれ、医療の質の保証とお金が集まる、こういう病院が残っていくのではないだろうか。
 地域医療も、急性期地域中核病院があって、回復期リハビリテーション病院が在宅への橋渡しをして、かかりつけ医がいて、施設があってという形になってくるのではと考えている。
 

DPCを活かすマネジメント
 急性期病院も出来高払いからDPC一日包括払いに変わってきた。出来高の世界ではコストの積み上げが売上になるので、制度的に無駄な医療でも売り上げアップで貢献し、許されるところがあったといえる。それがDPCになると1日いくらということになって、医療の質のアップとコストの削減、良質で効率的な医療が求められることになる。これは一言でいうと、患者を早く治して家へ帰すというアウトカム重視の経営といえる。診療報酬の点数にはないからこの機械は買わないのではなく、この機械を使って早く診断がつき治療ができ早く家に帰すことができるからこの機械を買おうという、アウトカム重視の経営の価値判断が大事になってくる。
 ただ、アウトカムばかりやっていると、病院のあり方がグラグラしてくるので、理念を大切にすることが大事になる。理念に基づいてアウトカム重視の経営をする、これがDPCの時代に求められる経営ではないかと思う。そのためにも病院の機能の絞り込みとスタッフの機能の絞り込みが必要になってくるし、理念を守るためには自己変革し続ける組織に変わる必要があると思う。
ここで少し出来高とDPCの違いについて話しておきたい。
  1. 物のコストの変化
    出来高の世界は、コストの積み上げが売上で、コストの差益が利益となって公共料金と同じであった。いい医療をして物のコストを下げると、売上が下がって差益、すなわち利益も減っていく。いい医療をしているのに、苦しい経営状況になってしまう。
    DPCの世界は一日包括払いなので、売上が一定でいい医療をして物のコストが下がると、コストが下がるほど利益が出てくることになる。つまり、急性期病院も「お役所」から、普通の商品を扱う「普通の企業」になったといえるし、病院もマネジメントが必要な時代になったといえる。
     
  2. 人件費の変化
    人件費についての考え方も変化している。出来高の世界では利益はいろいろなものの差益であり、診療報酬が極限まで抑制されて差益が減り、それに伴い利益も急激に減ってきている。そういう状況のもとで人を入れて良質で効率的な医療をするほど人件費が増え、物のコストも下がり経営がさらに苦しくなっている。
    しかしDPCでは一日包括払いなので、スタッフを増やしチーム医療をすることにより、合併症を予防し、長期入院が減少し、在院日数が下がり、医師、看護師一人当たりの処理患者数が増えるため売り上げが増え、利益が増える。そして無駄のない医療をするほど、物のコストが下がって利益が増える。これらにより労働生産性が上がって、多くのスタッフを入れても人件費比率が相対的に下がってくることになる。構造的に人を入れてチーム医療で良質で効率的な医療をするほど経営は楽になってくるといえる。
    ちょっとわかりにくいが、人件費比率の減少は出来高の世界では売上の中の人件費の減少になり、スタッフの数を減らすと過重労働になるし、個々の人件費を減らすことは、スタッフの質に響き、医療の質が下がってしまう。
    DPCの世界では、チーム医療で労働生産性を高めることで患者一人当たりの人件費比率が減少する。医師、看護師、リハスタッフは、処理患者数を増やして売上をアップして人件費比率を減少させるし、その他のスタッフは、合併症を減らすことで在院日数を減らし、人件費比率の減少に貢献することになる。
     
  3. DPCの出来高部分
    出来高部分は手術やリハビリ、食事であり、医療機能の絞り込みで出来高部分は増加する。
    DPCでは、チーム医療でコストを下げて、労働生産性を増やし、病院の医療機能の絞り込みで出来高部分を増やす、そういった総合的な病院のマネジメントが大切になってくる。
     
  4. 出来高からDPC、DRGへ
    出来高の世界では、スタッフを入れると人件費が増えるし、いい医療をして物のコストを下げると売り上げが下がることになるので、いい医療をするほどどんどん利益が減って、良質で効率的な医療をするほど苦しくなる。(資料23)
    しかし、DPCでは、コストの削減が利益の増加となるため、①チーム医療で薬の使用量を減らし、ジェネリックの導入で単価を減らす。②薬、検査の外来移行。③診療材料の効率化と切り下げ。④フィルムの包括化。⑤画像や検査のリース料や人件費は一定なので、アウトカム重視で必要ならば積極的に行なう。⑥検査や給食、寝具などの外部契約を出来高の発想からDPC対応に変える。⑦査定の減少。
    これらのコストの削減で利益が増えるので、その利益でスタッフの増員とシステム、設備の充実ができ、チーム医療で労働生産性がさらに高まり、医療機能の絞り込みで出来高部分の上乗せがあり、さらなる収入のアップとコストの減少から利益の増加があって、スタッフ、システムも充実していくことになる。そうすると医療の質がよくなって患者数が増え、DPCで在院日数が下がってベッド稼働率が低下しても、患者数の増加で補ってさらに利益が出て、またコストも減少して、利益アップするというように、プラスのDPCサイクルになるので、DPCでは人を入れ良質で効率的な医療をするほどその効果は顕著となる。(資料24)
    スタッフの数と利益をみてみると、出来高の世界では看護であれば基準看護の看護師数が最も効率的であり、病院の努力で患者数を増やし単価を上げて収入を増やしても、スタッフを多く入れると利益は減少する。DPCの世界では、7:1看護にICUやHCUを組み合わせ5:1看護程度にして、さらには多くのスタッフがチーム医療で良質で効率的な医療を提供した方が、利益は増えることになる。DRGでは、さらにスタッフを増やして在院日数を短縮した方が、利益は爆発的に増加する。
    出来高の世界では、狼は自由に草原を闊歩していた。DPCの世界では、狼は羊のいる柵の中に囲われたが、羊は自由に食べられる状態といえる。DRGの世界では、狼同士、強力な急性期病院同士の喰い合いとなると思うので、今からDRGを見据えて筋肉質の病院づくりが求められる。(資料25)
 

「医療機能の絞り込み」と「スタッフ機能の絞り込み」と「コスト削減」の効果は
 ―某医療センターと近森会の比較―
 平成18年度の某医療センターとの比較から、病院機能の絞り込みと、スタッフ機能の絞り込み、コスト削減の効果はどのようなものか見てみたいと思う。某医療センターは648床の全館急性期病院で、近森会は当時3病院で急性期が338床、回復期リハビリテーションが180床、精神科が104床の合計622床となっている。
 医業収入は、某医療センターが約120億円で近森会が約129億円と、リハビリと精神科のベッドが半数近い近森会の収入が多くなっている。その理由は稼働率が高いためで、急性期では95%、回復期リハと精神科ではほぼ100%近くまでいっている。あと急性期は医療機能を絞り込んでいるので、某医療センターに比べ入院単価が1万円高くなっている。
給与費は、某医療センターが約70億円で近森会が約63億円。職員数は717人と1,096人で、近森会は某医療センターの1.5倍のスタッフを雇い、しかも7億円、人件費が安くなっている。これは、某医療センターは人件費の高い医師、看護師が85%、近森会3病院では医師、看護師は62%で、コメディカルが28%、事務職員が10%となっている。某医療センターは昔ながらの医師、看護師中心の病院で、近森会は職員構成からもチーム医療を徹底している病院といえる。リハスタッフを中心としたコメディカルや事務職が非常に多く、診療情報管理士も30名擁している。やはりコストの高い医師、看護師中心の病院は58.8%と人件費比率が高く、チーム医療をしている病院は、チーム医療で収入も増加し、労働生産性も高くなり、スタッフを多く入れても相対的に48.6%と人件費比率は下がっている。
 薬や材料費も、某医療センターが約36億円、近森会が約22億円と、14億円少なくなっている。これは、病院の機能を絞り込んで薬や診療材料の使用の少ない回復期リハや精神科があるためであり、さらに急性期ではチーム医療とジェネリックへの切り換えで一生懸命、薬や診療材料のコストを下げている。
 一般経費は、某医療センターが32億円で近森会が33億円だが、近森会は民間で余分に3億円税金を払っているので、一般経費でもコストは安くなっている。水、光熱費の多い某医療センターと比べ、近森会の経費で突出している点は、研修に毎年1,000人以上を県外に出しているので、旅費、交通費。さらに今年も院内旅行でスペインのアンダルシアやベルギー、オランダなどに行っているので、福利厚生費、また交際費もたいへんに高くなっている。職員のやる気を奮いたたす、そういう一般経費の使い方をしている現れだといえる。
減価償却は、某医療センターが20億円で近森会が5億円。補助金があるとはいえ、某医療センターは診療報酬上の常識的な設備投資よりも4倍高いお金をかけているということになる。某医療センターには補助金が30億円ほど入っており、医業外費用は某医療センターが15億円で近森会が3億円、そのうち利息の医業収入に占める比率は7.9%と1.7%になっている。
最終的な損益を比べると、某医療センターが22億円の赤字で、近森会は6億7,000万円の黒字となっている。某医療センターは繰入金が30億円あるので、それを合わせると50億円以上の赤字という結果になる。(資料26)
 急性期医療を行なっている某医療センターと近森病院の100床当たりの比較でも、同様の結果が出ている。医業収入は、近森病院は100床当たり27億円と某医療センターに比べ8億円多くなっている。給与費は、近森病院の方が1.66倍のスタッフがいることから、12億円と1億円高く、薬、材料費も高度医療を行なっていることから6億2,000万円と5,000万円高く、一般経費も6億4,000万円と1億3,000万円高くなっている。ただし、病院の機能の絞り込みとチーム医療で労働生産性を上げ、収入が8億円多いことから、給与費は44.3%で14.5%、薬、材料費は23.0%で6.9%、一般経費は23.5%で3.2%低くなっており、初期投資を抑えることによって、減価償却費、利息とも四分の一と少なくなっている。(資料27)
近森会は、初期投資を含めたコストの削減と、チーム医療で労働生産性を高めて人件費比率を下げ、医療機能の絞り込みを徹底して行なっている。某医療センターは、昔ながらの医師、看護師中心の公立病院で、薬、診療材料や外部委託の人件費、食材費などの一般経費は出入り業者を徹底的に叩いている。そういう業者いじめの買い叩きではなく、医療の仕組みを変えて、無理のない合理的なコストの削減をしていくことが健全な医療機関として求められている。本気で病院のあり方を変え、スタッフの構成を変え、医療の仕組みを変えることが大事ではないかと私は思っている。
 

最後に
-激動の時代を生き残るために-
 昔は医療費が安くて自己負担も軽かったため、長期入院も可能であったが、国の借金が増え高齢者が増えた現在、上手に早く安く治して自宅で元気に暮らしてもらうことが必要となった。高齢社会における医療は、迅速確実な根本治療と、栄養サポートで低栄養を予防し合併症を防ぎ、リハビリテーションで廃用に対応することが求められている。根本治療の車の両輪は栄養とリハビリテーションだといえる。
 医療界はいま激動の時代を迎えており、ボトムアップでは間に合わず、病院の理念のもとにトップダウンが大事になっている。永続する病院というのは最も大きな病院でもなければ、最も強い、補助金がいっぱいもらえる病院でもなく、時代の医療ニーズに最も適応する病院であり、自己変革こそが生存の最大の条件といえる。固定概念に縛られ、これまで通りの医師、看護師中心で高コストの医療を続け、病院として衰退の道を歩むのか、それとも病院の医療機能を絞り込み、チーム医療で良質で効率的な医療を行ない、病院らしい病院として存在し続けるのか。これらはすべて、病院のトップの感性と決断にかかっており、病院スタッフ全員の実行力にかかっている。