救命救急センター(ER)
当院では、1964年(S39)年に高知県で最初に救急告示病院に指定されて以来、『医療の原点は救急である』『救急医療こそ、今この瞬間に人の命を救う最も必要とされる医療行為である』という方針のもとに、職員一同が救急医療に取り組んでまいりました。
当初は各科への割り振りによる単独診療が主体の救急医療でしたが、2002年10月より、ER(Emergency Room)救急センターを開設し、救急担当医師と各診療科医師の協力による新しい医療体制を構築しました。
その後、救急科専門医の赴任、専従医師の増員を契機に、さらに院内支援体制を強化しあらゆる救急疾患に全科協力のもと対応してきました。


北米型 ERとは、1996年からNHKの医療系ドラマ『ER 緊急救命室』が放送されて以来、日本でも注目されるようになりました。受け入れ側の医療機関の立場から考えられた、一次、二次、三次救急という日本独自の救急医療体制とは異なり、軽症から重症まですべての患者さんを受け入れ、その緊急度・重症度を即時に判断した上で治療にあたる救急医療体制です。
患者さんが自身の病状が軽症であるのか、重症であるのかを判断するのは容易なことではありません。判断ミスや一次から二次、三次へという転送による診断、治療の遅れが生じてはなりません。このため、救急車やヘリコプターで搬入される重症患者さんから、自身で病院を受診される walk in 患者さんまで、すべてを受け入れ、直ちに緊急度・重症度を判断した上で優先順位を決定し治療にあたります。
このシステムは『トリアージ』と言われ、災害などの多数傷病者発生時などでも行われますが、当院では訓練を受けた専任の看護師や救急医により行われています。このため、たとえ救急車で搬入された患者さんでも、緊急性が低い場合には、多少お待ちいただくこともあります。実際に、自身で病院受診した患者さんの方が、緊急度が高い場合もしばしばあります。
救急専従医師による初期治療により病態の安定を図りつつ、各診療科の専門医に引き継ぎ、さらに高度な専門治療が行われていきます。このように、当院では医療側よりも患者さんの立場を考え『いつでも、誰でも、どんな疾患でも』をモットーに、患者さん主体の救急医療を行ってきました。
その結果、県内で最も多くの救急患者さんを受け入れてきた実績や災害医療支援への取り組みなどを評価していただき、2011年5月には県内で3番目の救急救命センターに指定されました。これにより、心疾患、脳卒中や複数診療科にまたがるような重症患者さんを優先的に24時間体制で受け入れるという使命を果たさなければなりませんが、これまでの診療スタイルを大幅に変更することなく、可能な限りは軽症から重症まで広く受け入れていきたいと考えております。
救命救急センターでは、重症患者さんが数多く受診されますので、軽症患者さんにつきましては、診察順序の変更や待ち時間などでご迷惑をおかけすることもございますが、何卒ご理解ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。また、重症患者さんのために常時ベッドを確保する必要がございますので、急性期治療により容態の安定した患者さんには早期の退院、転院をお願いすることになりますので、重ねてご理解のほどお願い申し上げます。
近森病院 救命救急センターは、地域医療機関や消防機関との連携を通じ、第三次救急医療機関として全診療科が協力し、重傷患者さんを受け入れ、社会復帰を全力で支援します。
- 安全で高度な救命救急医療を通じて、患者さん中心の医療を実現します。
- 地域医療機関、消防機関との密な連携を実現します。
- 職員の継続的な教育を実践します。
- 医療活動を通じて社会貢献を実践します。

当院救命救急センターは、救急専従医師、各診療科医師、研修医、専任看護師のほか院内救急救命士、診療放射線技師、薬剤師、事務職員、クラークなど多職種により運営しています。
救急医療の変遷と院内の救急体制変革などを経て、現在までの救急車の受け入れは、図1のように2000年以降は年間5,000件を超え、ここ数年は6,000~7,000件と中四国でもトップレベルの受け入れ件数となっており、walk in患者さんと合わせて約30,000人/年の患者さんに対応しています。
受け入れ患者さんの重症度に関しては、軽症(外来での投薬、処置で対応可能)が約半数で、中等症(入院や手術が必要)が約25%、重症(救命救急病棟、集中治療室など重症ベッドへの入院管理が必要)が約25%となっております(図2)。厚生労働省統計に基づく重篤患者数は、図3のように2016年度では1,800件を超えました。
心肺停止患者さんではウツタイン統計を、外傷入院患者さんでは全症例に重症度スコア、予測生存率などを算出し、治療効果の自己評価にも取り組んでいます。
救急車の応需率では、高齢者の肺炎やインフルエンザ患者の増加する1~2月ではベッド確保が困難な状況により低下がみられるものの、年ごとに改善傾向を示し、2016年には概ね95%前後を維持しています(図4)。
初期治療は、センター1階の救急外来(ER)で行い、そこから手術室、検査室などへ移動しますが、ERでの緊急手術にも対応可能な設備となっています。入院が必要な患者さんは、重症度に応じて救命救急病棟(18床)、集中治療室(ICU-18床)、高度治療室(HCU-16床)、および一般病棟への入院となります。脳卒中患者さんには、脳卒中専用病床(SCU-24床)があり、脳卒中専門医が24時間体制で対応しております。


2007年6月からは、重症患者さんを中心に現場出動、病院間搬送、遠方の消防機関との中継搬送などに対応しており、2018年4月からは全日日勤帯に対応しています。
ドクターカーには最新の医療機器が搭載されており、いかなる疾患にも対応可能ですが、循環器系疾患、脳疾患、外傷が多くを占めています。また、高知県防災ヘリのドクターヘリ的運用で始まったヘリ搬送は、2011年に高知県ドクターヘリの運用開始後に、さらには当院屋上ヘリポートの完成に伴い搬入件数も徐々に増加し、現在は年間100件を超え、県内外から多くの重症患者さんが搬入されています。
なお、当院の救急科医師も定期的にフライトドクターとして搭乗しています。ドクターカー出動件数は、横ばいから若干減少傾向にありますが、その分ドクターヘリでの搬入件数が増加しています(図5)。


- 近森病院 救命救急センター ドクターカーの出動基準
- ・気道確保が困難(窒息症例など)
- ・急性期呼吸不全、慢性呼吸不全の急性憎悪
- ・急性心不全、心筋梗塞など循環が不安定
- ・脳卒中の疑いや意識障害、けいれん発作
- ・ショックあるいはショックに陥る可能性あり
- ・広範囲熱傷(気道熱傷を含む)
- ・急性薬物中毒
- ・重篤な代謝性疾患(腎・肝不全、糖尿病など)
- ・心肺停止(搬出、搬送困難)、あるいは蘇生後
- ・重症外傷、多発外傷(止血困難、搬出困難など)
- ・その他:事故・災害現場での医療活動が必要な場合など
日本救急医学会専門医資格を有する指導医を中心に専攻医、研修医の指導に当たっています。ほぼマンツーマン体制によるon -the- job trainingのみならず、各種の勉強会、カンファレンスなどを通じて、いかなる疾患にも対応可能な知識や技術の習得に励んでいます。専攻医は、研修基幹病院である近森病院研修プログラムに従い、当院及び関連施設での研修を行っています。
Off-the-job trainingとしては、JATEC(外傷初期診療プログラム)、JPTEC(病院前外傷救護)、DMAT(災害医療支援チーム)など各種のコースに、救急科医師を中心に講師、受講者として積極的に参加し日々研鑽を積んでいます。なお、近森ICLSコース(初期救命処置コース)は、2018年7月には55回を数え、県内外から広く講師、受講生を受け入れ、多職種間での交流も図っています。
MC(メディカルコントロール)体制も整備され、救命士に対するオンライン指示対応や事後検証なども行っています。また県内3つの救命救急センターの持ち回りで、定期的に消防機関との症例検討会も行っています。ほかにも、高知大学をはじめとする医学生、救急救命士養成校、看護学校からの実習生も積極的に受け入れ、その指導に当たっています。


災害医療支援では、2008年に災害拠点病院に指定され、DMAT(災害医療支援チーム)については、2018年7月時点で、院内から21名が隊員として認定されており、いつでも災害支援に対応可能な体制をとっています。
これまでに、東日本大震災(福島、宮城)、熊本地震(熊本、大分)、西日本豪雨災害(愛媛)にも出動し医療支援活動を行ってきました。毎年9月の政府主催の防災訓練やDMAT研修会にも定期的に参加し、知識や技能の維持に努めています。なお井原部長はスマトラ沖地震、ニュージーランド地震の際に、国際救助隊の一員として現地での支援活動に参加しました。


院外関係者を含め、社会的貢献を推進することを目標とする救命救急センター連絡協議会、院内各部署との連絡調整をはかるための救命救急センター運営委員会を毎年1回以上、日常診療での問題解決などの役割を果たす救急委員会を月に1回開催しています。また、不定期ではありますが、より実務的な受け入れ体制の強化などを検討するワーキンググループ、外科系医師を中心とするtrauma call 委員会なども開催し、質の高い救急医療体制の構築を目指し柔軟に対応しています。
ERでは、平日日勤帯は下記のスタッフで救急車搬入患者さんから、walk in 患者さんまで、すべてに対応しています。夜間休日は当直体制となりますが、各診療科ともに呼び出し体制をとっておりますので、安心して受診してください。
- -平日日勤帯-
- 救急専従医師 4~5名、内科系 walk in担当医師 2~3名、研修医 3~5名
- 看護師長、主任、担当看護師、薬剤師、救急救命士、クラーク、秘書、事務職員など
- -休日夜間-
- 救急専従医師 1名、内科系、外科系担当医師 2名、研修医 2~3名
- 救命救急病棟医師(ICU、SCU 担当医師は別に常駐)、担当看護師、事務職員など
当院では5か年計画によりハード面の充実を図ってまいりましたが、さらに高度で安全な救急医療を提供すべく、高知県の皆様に『必要とされる救急医療』を目指し、日々精進してまいります。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。
![]() | 救命救急センター・センター長 兼 救急科部長 根岸 正敏 (埼玉県 出身) Masatoshi Negishi M.D. | 日本救急医学会 救急科専門医 日本脳神経外科学会 専門医 高知大学医学部 臨床教授 VHJ機構 指導医 JATEC インストラクター JPTEC 高知県世話人・インストラクター ICLS ディレクター ACLS インストラクター BLS インストラクター 日本DMAT隊員 |
【専門分野】救急疾患全般、特に脳卒中や頭部外傷 | ||
【PR】最善の救急医療を提供できるよう全力を尽くします | ||
![]() | 総合診療科部長 杉本 和彦 (高知県 出身) Kazuhiko Sugimoto M.D. | 日本救急医学会 救急科専門医 日本循環器学会 循環器専門医 JATEC インストラクター JPTEC インストラクター ICLS ディレクター ACLS インストラクター BLS インストラクター PALS ディレクター ISLS ディレクター JMECC インストラクター Emergo Train Systemシニアインストラクター 日本DMAT 隊員 ICT (インフェクションコントロールドクター) |
【専門分野】救急総合診療 | ||
【PR】中山間地域を含む地域医療機関との連携を取りながら、高知県全域の住民の方々に質の高い医療を提供できるよう努力します。 | ||
![]() | 総合診療科部長 浅羽 宏一 (岩手県 出身) Koichi Asaba M.D. | 日本内科学会 総合内科専門医 日本内科学会認定内科医 日本糖尿病学会 専門医 日本内分泌学会 内分泌代謝科(内科)専門医 |
【専門分野】総合診療、糖尿病、内分泌代謝内科、内科 | ||
【PR】海軍軍人を脚気から救った医師・高木兼寛の教え:「病気を見ずして、病人 を見よ」を守り、全人的医療を心掛けていきます。 | ||
![]() | 救急科部長 井原 則之 (埼玉県 出身) Noriyuki Ihara M.D. | 日本救急医学会 救急科専門医 日本外科学会 外科登録医 日本DMAT(災害派遣医療チーム) 講師・隊員 高知県災害医療コーディネーター 災害医療ACT研究所理事 日本災害医学会 薬事委員会・社会医学系指導医 JATEC インストラクター JPTEC インストラクター PhDLS管理世話人 MCLS管理世話人 JICA 国際緊急援助隊救助チーム医療班・技術検討員 |
【専門分野】救急医療、外傷医療、災害医療 | ||
【PR】高知市、高知県、四国、そして日本の救急医療・ 災害医療のために力を尽くします。 | ||
![]() | 救急科科長 竹内 敦子 (東京都 出身) Atuko Takeuchi M.D. | 日本救急医学会 救急科専門医 日本脳神経外科学会 専門医 日本DMAT隊員 ICLS インストラクター JATEC プロバイダー 認定ICLS ファシリテーター JPTEC プロバイダー JTAS認定医師アドバイザー |
【専門分野】救急医療全般、脳卒中、頭部外傷 | ||
【PR】救命救急センターとなり、身が引き締まる思いです。 これまで以上に、日々懸命に取り組んでいきます。 | ||
![]() | 救急科科長 三木 俊史 Toshifumi Miki M.D. | 日本救急医学会 救急科専門医 日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医 日本消化器病学会 専門医 日本消化器内視鏡学会 専門医 日本DMAT隊員 ICLS ディレクター JMECC ディレクター ACLS インストラクター BLS インストラクター JATEC プロバイダー JPTEC プロバイダー FCCS インストラクターアシスタント |
![]() | 医師 矢崎 知子 (徳島県 出身) Tomoko Yazaki M.D. | JATEC インストラクター ICLS インストラクター ACLS プロバイダー BLSO プロバイダー |
【PR】大好きな高知県に貢献するため、地域に根ざした救急集中治療を近森病院で行っていきたいです。 | ||
![]() | 後期研修医 平野 孝士 (神奈川県 出身) Takashi Hirano M.D. | |
【専門分野】救急医療 | ||
【PR】高知県での救急医療に全力を尽くします。 | ||
一 般 外 来 |
外科系 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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