ER救急センター

部長 / 根岸正敏

2014年8月16日
ヘリポート併設の近森病院新館A棟完成に伴い、新 救命救急センターが稼働しました。

■診療体制

 近森病院救急部門は、2011年5月に高知県から救命救急センターに指定され、まもなく4年が経とうとしています。救命救急センターの使命として、三次救急といわれる重症患者さんの受入れを行うのは当然のことですが、重症から軽症まで、救急車やヘリコプターで搬入される患者さんから、歩いて受診される患者さん(walk in)まで、あらゆる状態の患者さんを受け入れています。救急車やヘリでの搬入患者さんは医師が、walk in患者さんはおもにトリアージナース(院外、院内で訓練を受けた専任の担当看護師で、JTASというトリアージシステムに則り判断しています)が、緊急度・重症度から優先順位を判断した上で、救急専従医師による迅速な診断と治療が行われます。初期診断・治療の後、さらに専門医に引き継がれ、高度の入院治療が行われます。

 重症患者さんの入院を受入れる救命救急病床は18床が認可されており、ほかにICU18床、SCU15床、HCU16床、一般病棟と患者さんの状態に応じた病棟での入院治療が行われます。入院病棟の決定は、患者さんの病態を十分に把握した上で、担当医師、ベッドコントロールナース(BCNS)、ERリーダーナースとの協議により決定しています。

 救命救急病棟は、日勤帯はER医師が、また休日夜間帯は各診療科の応援も得て24時間専従医師が常駐する体制をとっています。

 救急車の受入れ数は、ここ数年4,000件後半~5,000件で推移しておりましたが、2014年は5,475件と増加し(図.1)、この5,475件のうち入院が2,799件、心肺停止は94件でした(図.2)。新棟工事のため病床数が減少しておりましたが、8月の新棟完成の前後の月で、7月は519件、8月は515件の受入れ、また例年では病床が不足する12月でも504件の救急患者さんを受入れることができ、結果、前年と比べ、応需率も現在まで増加傾向で推移しております(前年度に比し、約10%の改善となっています)。(図.3,4)救急受入れ要請に対しては、対応病床が確保困難、救急車受入れが多数重なるなどの理由から応需できない症例もあり、さらに改善していきたいと考えています。全体的には、高知県の傷病者搬送基準が徐々に浸透し、救急車受け入れ要請数は若干減少傾向となりました。

 患者さんの重症度別では、軽症(外来での処置、通院で可能)は約46%、中等症(手術や入院が必要であるが、一般病棟で対応可能)が約19%、重症(ICUなどの重症対応病床への入院を要する)が35%でした(図.5)。

 ERの救急専従医師は現在6名(根岸、杉本、井原、竹内、三木、山本)で、各診療科からの応援医師、研修医4~5名での診療体制をとっています。ほかに、walk-in対応の内科系医師2~3名とで、救急車やwalk-inのすべての救急患者に対応しています。再診処置のみの患者さんには、外科、形成外科、整形外科医師が午後からのみ対応しています。

 ERは、2014年9月より全日勤帯には救急科医師が常駐し、夜間は内科系、外科系医師による当直体制ではありますが、救急科、各診療科ともに直ちに対応可能なオンコール体制をとり、24時間体制でバックアップしています。

また、2007年に開始したドクターカーは、救急部専従医師および救急救命士で対応しており、2014年は79件(近森ヘリポート搬送受入れ25件を含む)の出動がありました(図.6)。直接または中継搬送を行っており、例年通り循環器疾患や中枢神経疾患など緊急度・重症度ともに高い症例が多く、加えて8月からの新棟での稼働とともに外傷疾患についても重症度の高い症例が増加しております。

 看護師は、森澤センター看護師長、町田ER看護師長を中心に、外来部門であるER、救命救急病棟、また放射線部門看護師などが、一丸となって看護にあたっています。

 院内救急救命士は7名体制となり、医師や看護師とともにドクターカーやヘリ搬送患者受入れを中心として活動し、さらに救急患者さんの初期対応の業務も行っております。

  • 図1.年別の救急車搬入件数  » クリックで拡大 ->

    図1.年別の救急車搬入件数

  • 図2.2014年の月別救急車搬入件数  » クリックで拡大 ->

    図2.2014年の月別救急車搬入件数

  • 図3.2014年の救急車受け入れ患者重症度  » クリックで拡大 ->

    図3.2014年の救急車受け入れ患者重症度

  • 図4.2014年の月別救急車受け入れ要請に対する応需率の推移  » クリックで拡大 ->

    図4.2014年の月別救急車受け入れ要請に対する応需率の推移

  • 図5.2014年および2015年月別救急患者受入れ応需率の比較  » クリックで拡大 ->

    図5.2014年および2015年月別救急患者受入れ応需率の比較

  • 図6.2014年ドクターカー出動およびドクターヘリ受入れ件数  » クリックで拡大 ->

    図6.2014年ドクターカー出動およびドクターヘリ受入れ件数

 

■教育

 ERスタッフを中心に、AHAのBLS、ACLSコース(米国心臓協会心肺蘇生)、ICLSコース(救急医学会心肺蘇生)、JATECコース(初期外傷診療)、JMECC(日本内科学会認定内科救急・ICLS講習)やDMAT研修(災害医療)などの各講習会にもインストラクターとして積極的に参加しており、JPTEC(病院前外傷救護)は、例年通り2014年1月に近森病院コースも開催しました。また、2014年2月に引き続き、2015年2月にはJATECコース(初期外傷診療)を近森病院が事務局として開催し、全国から多くのスタッフ、受講生の参加がありました。

 加えて、地域医療講演会でも、救急、災害関係の講演も行い、日々研鑽を積んでいます。11月には、VHJ研究会第25回職員交流研修会を近森病院が事務局となり開催することができ、各分科会では活発な意見交換が交わされました。

■災害医療

 2010年に高知県から災害拠点病院に指定され、その役割を果たすために、近森病院の災害対策委員会、高知県および高知市の災害関係機関とも連携をとりながら、2014年も各種の災害訓練や講習会等に参加しています。
 高知県DMAT研修、MCLS(多数傷病者対応)研修にも、スタッフや受講者として参加しています。

 近森病院は、5カ年計画による新棟の工事で皆様には多大なご迷惑をおかけいたしておりましたが、2014年8月に新館A棟が完成、その後現在の本館の改修が終了し、病床数497の新病院としてスタートしました。合わせてヘリポートも完成し、DRヘリや防災ヘリによる搬送患者数も増加し、ハード面では今まで以上に充実した救命救急センターが完成致しました。

 しかし、すでに高齢者社会が進む日本、とくにその最前線を行く高知県においては、地域のニーズに合った医療が求められています。高齢化とはいえ、患者さんは多くの合併症を抱え病状も複雑化しています。そんな患者さんにも十分に対応可能な高度の救急医療の提供が今求められています。これからは、無駄を省いた、さらに質の高い医療が必要となります。近森病院 救命救急センターでは、地元高知県のニーズに合った、さらに質の高い救急医療を追求してまいりますので、よろしくお願いいたします。

 

■論文・著書
筆者 タイトル 出版社
  • 林悟
  • 西本陽央
  • 長谷川義仁
  • 竹内敦子
  • 根岸正敏
  • 高橋潔
外科的適応から外れ経過観察中に増大し、くも膜下出血をきたした未破裂脳動脈瘤の3例 脳卒中の外科vol.42
No.6453-457:2014
  • 酒井由夏
症状別院内トリアージの知識と実践~トリアージの実際:胸痛~ 看護技術2014年10月臨時増刊号
2014vol.60No.12P36-43(メヂカルフレンド社)

 

■発表
名称 開催日 場所 演題名 発表者
第77回(一社)日本脳神経外科学会
中国四国支部学術集会
4月5~6日 鳥取 血行再建術後、長期経過したBasedow病を伴う類もやもや病の一例
  • 林悟
  • 西本陽央
  • 長谷川義仁
  • 竹内敦子
  • 根岸正敏
  • 高橋潔
第5回日本プライマリ・ケア連合学会
学術大会
5月10~11日 岡山 人口過疎地域における救急対応能力向上の取組みについて
  • 杉本和彦
  • 北村聡子
  • 青木啓祐
  • 高橋拓也
  • 山口廣明
  • 山崎聡子
  • 根岸正敏
  • 瀬尾宏美
第30回日本救急医学会
中四国地方会
5月23~24日 高知 病院勤務をする救急救命士の取り組み
  • 藤中奈美
  • 橋永夏美
  • 坂本明美
  • 前田美穂
  • 加納多栄
  • 安岡記代
  • 町田清史
  • 森澤恵
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 杉本和彦
  • 根岸正敏
当院におけるCrowneddenssyndromeの検討
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 杉本和彦
  • 根岸正敏
第17回日本臨床救急医学会
総会・学術集会
5月31日
~6月1日
栃木 診療所の救急対応能力向上とファーストレスポンダーの導入による地域救急医療支援体制の確立
  • 杉本和彦
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 根岸正敏
第67回高知県医師会医学会 8月16日 高知 Mg製剤が奏功した破傷風の一例

社会医療法人近森会
近森病院
救急科

  • 中山隼
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 杉本和彦
  • 根岸正敏

神経内科

  • 田島萌夢
  • 今野優子
  • 佐島和晃
  • 葛目大輔
  • 山﨑正博
第42回日本救急医学会
総会・学術集会
10月28~30日 福岡 ER型救命救急センターからみた、後期高齢(75歳以上)救急搬送の現状と問題点
  • 杉本和彦
  • 山本賢太郎
  • 三木俊史
  • 竹内敦子
  • 井原則之
  • 根岸正敏
高知県内の医療機関におけるBCP策定状況調査
  • 山本賢太郎
  • 西松篤則
  • 長野修
第16回日本救急看護学会
学術集会
10月10~11日 大阪 アンケートから考えるA病院のトリアージの問題点
  • 東誠也
  • 西森百合
  • 坂本明美
  • 酒井由夏
  • 町田清史
  • 和田道子
院内トリアージ教育の現状と課題 (交流集会Ⅱ)
  • 酒井由夏
高知大学医学部災害医療講演会 11月26日   南海トラフ地震発生72時間シミュレーション
<私たちにできること・求められること>
  • 井原則之