解説(4)

■解説(4)
【注排液異常の集計と対策】

近森病院 透析外来  CAPD 室主任 後藤玲子 医師 近森正昭

初めに

血管病変の強い患者に CAPD を導入しているため合併症を持った患者が多く、 CAPD 継続を困難にする注排液異常が多かったのですが、対策に予防の効果がでてきたと思われるため報告します。

対象と方法

84 年から 2003 年までの導入患者は 264 名、対象患者は血管病変を有するか通院が困難な患者で平均年齢 64 歳、カテーテルは 336 本、スワンネックカテーテルは 92 名、 108 本、スワンネック以外のカテーテルは 228 本でした。

カテーテルのねじれによる一時的な注排液異常は申告のない場合がありますから総数不明ですが、注排液異常が継続した患者は 28 名、導入時で液漏れを合併したのは 21 名、注排液異常でバッグ交換できなくなった 11 名の内、カテーテル交換に至った患者は8名、腹膜透析中止に至った患者は3名、注排液異常があり排液時間を延長させたりミルキングする間違った対応で閉塞させた4名を除くと注排液異常でカテーテル交換が必要だったのは 93 年までの4名でした。

腹部手術は 10 例、胆嚢摘出術3名、子宮癌全摘3名、胃切除2名、外傷による試験開腹1例、腹部大動脈グラフト置換1例でした。

子宮癌術後症例に大網癒着はありましたが、腹部の手術をしていても注排液に影響はありませんでした。

注排液異常予防のためにミルキングの禁止、排液時間の指導、便秘の管理をおこない、排液が少ない場合は注液し間を空けて再度バッグ交換させました。

結果

93 年以降カテーテル交換を要した症例は皮下トンネルで筋膜にカテーテルを通した1例と瘢痕ヘルニア根治術をおこなった1例で、注排液異常は導入時の一時的な発生だけとなっています。

考察

注排液異常は注液できない場合と、排液量が少ない場合を指しますが、腹腔内容物によりカテーテルがねじれたり、一時的に穴がふさがったり、腹腔内の透析液量が少ないだけかもしれません。

内腔が閉塞しない限り継続的な注排液異常は生じません。

カテーテルは腸管の蠕動で時計回りに移動し、注排液時の水流で跳ね上がり、カテーテルの重さで低い位置へ沈みます。

写真1

写真1は 70 歳、男性、糖尿病で慢性心不全の患者ですが、直腸に便塊がありカテーテルが持ち上げられ排液されませんでしたが、浣腸して注排液がスムースになりました。

注排液異常は朝が多く、異常があっても注液してバッグ交換を終了し、歩いたり排便して再度バッグ交換すると回復します。

年間 800 件前後の時間外電話対応をしていますが、排便管理で注排液異常の訴えはなくなりました。

患者の訴えも集計しましたが定性的に処理し、今回の報告では継続して注排液できない状態や注排液の異常で除水が不十分になった症例を集計しました。

そのため、 CAPD 導入時に注排液異常が多くなり、慢性期は腸動の悪い特定患者で生じていました。

導入時には透析液の化学的刺激で腸管の浮腫が生じ、状態の悪い高齢者と糖尿病患者では臓器微小循環が障害されているため腸動が低下します。

腸動の低下でガスと固形物に便が分離して腸管内ガスが増加して腸管が浮き上がり腸管膜がカーテン状に腹腔内をさえぎるため透析液の囲い込みやカテーテルの位置異常が生じます。

浣腸か、下剤、プロスタグランディン製剤投与をおこない改善しています。

慢性期は特定の患者でフィブリンが閉塞したり、排液時間を長くして大網をからませたり、便秘による透析液の囲い込みやカテーテル先端が胃の右側へ移動し大網にからんだ症例が認められました。

カテーテルは腸動に合わせて時計回りに動き、カテーテルの重さで低い位置へ移動しようとしますが、長期的には安定する位置に落ち着きます。

55 歳、男性、糖尿病の患者で1月 26 日に導入後の写真です。
写真2 2004 年5月9日、カテーテル先端は左腸骨
写真3 2004 年5月 25 日、カテーテル先端は臍部
写真4 2004 年6月 17 日、カテーテル先端は左腸骨
写真5 2004 年7月8日、カテーテル先端は右上腹部
写真6 2004 年8月3日、カテーテル先端は左腸骨

写真7寝たきり患者では膀胱直腸窩より肝臓のある上腹部が低いため上腹部へ移動する場合があります。

写真7は 72 歳、女性、糖尿病で卵巣腫瘍切除術後、胆摘後。

下行結腸と壁側腹膜の間の溝にカテーテル先端が固定されています。

普段、横になっていることが多いとこの位置にカテーテル先端が移動しますが、左下側臥位でバッグ交換すると注排液の異常は生じません。

 

写真8写真8は上腹部へカテーテルが移動したときに長時間排液して大網がカテーテルにはまり込み腸管の動きでカテーテルが引き伸ばされています。

注排液ができなくなったためカテーテル交換をおこないました。

一時的に排液が少ないとき、長時間排液にしたままにしたりミルキングするとカテーテルに大網などがはまりこみます。

カテーテルの側孔に大網が当たって注排液が悪くなっても吸引して側孔に引き込まない限り閉塞することはありません。

排液量が少ないと患者が思いこめば排液時間が長くなるため、排液量ではなく体重による自己管理へ変更し、排液時間は 15 分といった個別に具体的な指導をおこないミルキングは禁止しました。

外来では看護師が定期的な電話問診をおこない下剤の量を調整しています。

便がでているからと下剤をやめたり、下痢をしたからと下剤の量を減らしている患者が多いためです。

スワンネックカテーテルで注排液異常が継続した症例は5例、スワンネック以外は 23 例で発生数は倍ですが、スワンネックを使用したのは 80 年代で糖尿病や高齢者が少なく、腸動が低下する患者が少ないためでした。

膀胱直腸窩以外の位置にカテーテル先端が移動した患者は年間 10 %から 17 %で下行結腸と壁側腹膜の間に先端がはまりこむ症例が位置異常の8割を占め、残りは寝たきり患者で右上腹部にカテーテル先端が移動していました。

まとめ

カテーテル先端はバッグ交換のたびに移動します。

注排液異常の予防には導入時にミルキングの禁止と排液時間を具体的に指導し便秘の管理をすることが必要でした。

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