相談役 近森正幸のドキュメント document

相談役 近森正幸のドキュメント

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2021年慰霊祭

2021年慰霊祭 追悼の言葉

社会医療法人近森会 近森病院
院長 近森 正幸

本日ここに2020年度、第7回近森病院慰霊祭を挙行するにあたり、ご臨席いただきましたご遺族の皆様ならびにご来賓の各位とともに、医師、研修医はじめ病院職員一同、ここに謹んでご霊前に追悼の意を表し、御霊の安らかならんことをお祈り申し上げます。

近森病院では、1973年から2020年までの48年間に420例の病理解剖を行わせていただきましたが、本日、慰霊のお供えをいたしました御霊は、2020年1月から12月までの1年間に病理解剖を行わせていただきました御霊10柱であります。

皆様は、自らの強いご意志、ご遺族の方々の深いご理解とご協力のもとに、医学の教育・学術研究、そして医療の発展のためにご遺体を解剖に供してくださいました。その崇高な御心に対し、ここに深甚なる敬意と感謝の念を捧げます。

最近では、オートプシー・イメージングと呼ばれる亡くなられた後のCT-スキャンによる画像診断を病理解剖の代わりに採用し、全身の構造や出血性の病巣などは正確に診断できるようになってまいりました。しかし、過去も現在も将来においても、傷病の真の病態を知るためには病理解剖に勝る方法がないことに変わりはありません。生前の診断と治療内容の検証、死因の究明など、臨床病理検討会CPCで詳細に検討され、生前には確認できなかった真実を明らかにし、さらにより良い医療に結びつけるための努力が絶え間なく続けられています。

大切な方がなくなられた直後に病理解剖のお願いをさせていただくことは、愛するご家族を失われた悲しみでご遺族のお気持ちが混乱している時に、さらなる悲しみと辛く苦しい決断をご遺族に求めるものであったと考えております。そのような悲しみの中で、病理解剖をご承諾賜りましたご遺族のお志を、私たちは決して忘れることはございません。そして、病理解剖のご承諾をいただけたことは、担当医はじめ医療に関わらせていただいたスタッフの努力と誠意を、ご遺族の皆様方に認めていただいた結果であると、心から感謝しております。

私たち医療に携わる者は、真の病態を把握し治療を繰り返すことで前進し続けております。そのことが、医療をさらに発展させることであり、皆様の尊いご意志に応える唯一の方策であることを、自らの胸に刻み込んでいます。

本日は、ご尊体から直接教えていただきました研修医をはじめ、生前にチームで治療を担当させていただいた医師や看護師などすべてのスタッフ、病理解剖を担当した病理医や臨床検査技師が、皆様のご慰霊のために参列しております。御霊のご冥福を心からお祈りいたしますとともに、ご遺族の皆様および関係各位に深甚の敬意と感謝の念を捧げ、追悼の言葉とさせていただきます。

2021年2月20日