相談役 近森正幸のドキュメント document

相談役 近森正幸のドキュメント

相談役 近森正幸のドキュメント

ひろっぱ Vol.390 2019年1月号

年頭所感『今までの発想にとらわれない自己変革』
~キャッシュフロー重視の経営方針~

近森会グループ 理事長
近森 正幸

はじめに

3年前の2016年4月の診療報酬改定で7:1の看護師を揃えれば診療報酬が入るというストラクチャー評価からアウトカム評価が導入され日本の医療が大きく変わり、私ども近森会グループでも救急や紹介患者の受入れの増加、人件費削減を含む諸経費のコストカットや地域包括ケア病棟34床の開設などを行わざるをえなくなりました。

高知の地域医療も大きく変化

昨年4月の診療報酬改定ではアウトカム評価が一段と強化され、急性期医療では7:1看護の重症度・医療看護必要度が30%となり、回復期ではFIMによる改善率、在宅復帰率の強化、慢性期では医療区分2、3の重度の患者が80%以上でなければ病院として存続できない状況になっています。

その為、すべてのステージで重症の患者を数多く集め、早く良くして在宅へ帰すという競争が始まっており、在院日数の減少から稼働率の低下、一般病床の減少や地域包括ケアへの転換、慢性期では廃院や施設である介護医療院への転換が始まろうとしています。

何が起きても不思議ではない激変の時代

このような地域医療の変化は、高齢化が進み病床数の多い高知県で先進的に起こっていると考えていましたが、東京でも大学病院の勝ち組、負け組がはっきりし稼働率の著しく低下した大学病院も出ていますし、中小病院は全体に厳しくなり、ビル開業も頭打ちになっています。都内でも新卒の看護師の就職も難しくなり中小病院に流れたり、労働環境の厳しい公立病院から医師が辞めて行ったり、北海道などの田舎の自治体立病院では給与カットも始まっています。大災害が多発する自然界だけでなく、医療界も何が起きても不思議でない激変の時代が始まったように思います。

時代の変化に対応する近森会グループ

そういう時代の変化に備え、近森会グループは7カ年計画で全面的な増改築工事を行い、これから20年、30年耐えうるハードを作り上げました。

ソフト面でも20年前から地域医療連携をすすめ、さらには2000年からICUなどの重症病棟を整備し病棟連携も行ってきました。2003年には栄養サポートチームを開始することで、本格的な多職種による病棟常駐型チーム医療がスタートしています。このように病院や病棟、スタッフの機能を絞り込むことで医療の質を上げ、労働生産性を高め、病院機能を整備してきました。

今までの発想にとらわれない取り組み

さらには今までも行ってきましたが、サービスを向上し救急や紹介、一般外来からの入院を増やし、診療単価を上げ、医療の質を確保しつつコスト削減など、今までの発想、例えば「お給料は年功序列で毎年上がるもんだ」、「祝日は休むもんだ」といった今までの発想にとらわれない取り組みを迅速、確実に実行することが求められています。右肩上がりの時代から右肩下がりの時代に大きく転換したことと、今まで診療報酬という公的価格で医療が政府から保護されていたことが、この数年で大きく変わり、企業では当たり前の対応をせざるを得なくなりました。

本音の経営方針

時代が大きく変わり、「今までの発想にとらわれない自己変革」が求められる時代になりました。医療の質を上げ、それを限りない経営改善で支え、高知の救命救急医療の基幹病院として県民・市民のために最後まで生き残り責任を果たしていきたいと決意しています。その為には「キャッシュフローを最も重視する経営方針」で必要に応じ投資が出来る病院経営を行っていきます。

生き残る病院は大学病院のように大きい病院でも、繰り入れがいっぱい入る公立病院でもありません。自己変革を限りなく続けることができる病院こそが生き残れます。皆さんとともに、これからも元気に歩んでいきますので、どうかよろしくお願いいたします。